親愛なるものへ/HAL
いま項垂れているきみ
少しだけ顔をあげてみないか
いま立ちすくむきみ
少しだけ踏みだしてみないか
世の中は確かに酷い
世の中はとても苦い
でもね
ぼくもきみと同じだった
だから
きみを分かるなんて言わない
ただね
視線みたいなものを
少し移してみるとさ
立場が違っても
境遇に恵まれなくても
自分が認められなくても
ひっそりとだけど
きちんと生きているひとがいる
力まずに
ゆっくりと静かに呼吸するひとがいる
綺麗事みたいだけど
世の中を支えているのはさ
ほんとうはそんなひとのような気がね
ぼくはするようになった
だか
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