欠ける月/灰泥軽茶
私には何かが足りない
満ちた月が少しずつ欠けていくように
足りない何かが
少しずつ時間をかけて暗闇が私を包んでいく
すっぽりと暗闇が私を包んだとき
私はどこかに向かって
誰かに向かって
何も発することができずに息を潜める
がらんどうの大きな空ににぽつりと取り残され
心の姿かたちはうねり流されていく
けれども不思議なことに
時がたつとぽかんとした空に
ぽつりぽつりと小さな蛍が集まり
少しずつ時間をかけて淡い光りが注ぎ込まれ
誰かの眼差しに照らされていき
姿かたちを取り戻していく
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