幸せは眠っている/砂木
バイクの後ろに乗せられて バイバイと
母の実家に行った 四歳の頃
家族と離れて 初めて一人
そんな自覚もないままに
しーんとして広く感じる居間や台所
少し高い所にある黒電話をみつめた
しばらく泊まるのだとは思っていなかった
家族の病気や農繁期が重なり
父母の忙しさを見かねた母の実家で
私をしばらく引き取り面倒をみてくれたらしい
今にして思えばそのありがたさに下がる頭も
当時四歳の私には 意味がわからず
名前を変えて このうちの子になればいい
ずっと この家にいろ と言う
祖父母や 叔父などの からかい半分の気遣いに
力いっぱい 抵抗した
絶対に嫌 絶対に
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