(批評祭参加作品)観察することば/石川和広
僕は北村太郎という詩人が好きだ。
1922年東京生まれ。下町生まれで、友人の田村隆一と先の大戦の後、「荒地派」という、戦後詩の一時代を画した。
しかし、他の鮎川信夫や田村隆一となにかちがうのは、田村たちも外国文学の翻訳を多数行っている点は同じなのだが、どこか、前の二人がエリートの臭いが強く漂うのに、一風
違う感じがすることだ。
他の二人は詩人として書いていたような気がするのだが、北村は洒落っ気はあるものの、場末のジャズバーの経営者のような、現実を見つめている透徹した目が感じられる。
もちろん、いつも冷静なんではなく、むしろ、とても感情的な人に感じる。例えば「悲しき夢」の一節。
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