或るジャムと老婦人/灰泥軽茶
 
信州の秋まつりの露店で買った

ドイツ人の老婦人が作った

珍しい山の果実ジャム

店番をしている佇まいに吸い込まれ

若い頃はさぞかし美しかったに違いない

毎年自分たちだけが食べる分だけ作り

作りすぎた分を売っているそうで

ラベルなんかはドイツに住む妹さんから

送ってきてくれるらしい

すぐきのジャムと迷ったけれど

結局すすめてくれたのを買い

果実の名前を忘れてしまった

ブルーベリーのよりも

さらに酸っぱくて

信州の山で採れた実は

ドイツの老婦人が

ひっそり時間をかけて

コトコト煮て

たっぷり瓶に詰めたであろう

真心がこもり

芳醇深い味であり

色々な風景の匂いが

ふわりとした









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