ぶんしん/中川達矢
 
都合のいい鏡だ
ありのままを映し、臭いものを覆う
何も知らなかった頃に帰れれば
楽だろう
それはそれは楽だろう
(反転
今までの上は下になりました
なので、東京に向かう電車は下りです
冬のライン上りは寒いから中止
面白くないけれど笑える話はのぼれねえ
(虚構
嘘に決まっている
鏡がゆがめるのは横
右手が左手になって
俺の体はお前の体になる
(ほんもの
声がしました
それで終わりです
鏡に映る口は動くだけ
震えたのは、俺かお前か

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