冬と呪/木立 悟
死神の愛馬はたいて冬囃子
傘を咬む波の輪かかげ雨を招ぶ
まぼろしはまぼろしのまま糸車
泣く子から泣く子へ雨を遠去ける
髪の毛の花と同じ空くちづける
途切れてもかけら手わたすいのちかな
わたしからわたしを消したうた伝う
野の浪とそれを見つめる目の白と
かけらからはじまるものを見つづける
無いものを消すだけの日々ゆめ光る
置き去りの冬そのままの林かな
集めても集めても空ひとつのみ
冬に触れやわらかなひと離れゆく
死神の行方たなびく荒れ野かな
すぎる背に呪(まじな)いの冬ふりそそぐ
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