老人と少年と通りすがりの私/田園
老人は溜息をついた
己可愛さに守りに固執する馬鹿者どもの多くなった事よと
老人は猟師である
日本ではもう少なくなった狩りを主とする人生を送っている
老人はとある子供にいった
お前は好きな道にいけ
ただし己を過信しすぎるな
己に厳しくだがしかし目的を忘れるなかれと
子供は老人の行ったままに努力し
土方の仕事をしては母親たちが自らの子らに「ああなってはいけない」とひそひそ言われているのも我慢をし
鍛え
目的を果たした
老人はもう逝ってしまった
通り過ぎた私はその偉業を
すくいとれずにいるが
その子供の目を見れば分かる
「お前よ、好きな事をしろ」
老人はそう言ったそうだ
たしかにかつて少年であった男は
そのような目をしていた
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