菜の花も見ないで/天野茂典
 
いるうちに
   ザリガニが飛び込んでくる。
   
   アメリカから来たやつだ。赤い海老と蟹をあわせたような、
   食べられそうで食べられない。

   ザリガニはいくらでも取れた。
   持て余した。
 
   焼いても煮ても食えない。
   小川のギャングだった。
 
   富士山はみえない。
   でも見えているようにも見える。

   山村暮鳥のように日がな一日、
   菜の花も見ないで、遊んでいるのだった。

   いまでは特急準特急が通過する
   沿線の小駅に過ぎなくなった。

  
              2004・12・18
戻る   Point(1)