魂の血文字/yamadahifumi
い架空の父上
その架空の手の平の上で
俺が身ごもった覚えのない俺の赤子が遊び
まだ架空の身である俺に唯一、実在の希望を吹き込んだ
この世界がどんな一陣の風だとしても
頑として動かぬ一つの岩もあるのだと
そうして天使の福音もキリストの美声も去り
俺達にはたった一人アーティストが残された
それは自分を歌う自分という存在
もう神なしでもやっていけるさと、天国で髭面のニーチェが囁き
俺は手みやげに天使の羽毛を持ち帰って
悪魔の寄越した羽ペンを使って
この血文字を書いたのだった
幾千の月日にも錆びれないようにと
一切れ、一切れ、俺の魂を削ぎ落としていって
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