猫の自由落下/カマキリ
洗濯機はまだ回っている
時折カラカラとおかしな音がするのはきっと
いつもみたいにポケットに入っていたピックだろう
薄汚い壁に手をついて歩いている夢を見ていた
冷蔵庫は唸りを上げて冷やすことができないのを呪っている
かしゃりと踏んだ落ち葉も笑顔の件を呪っている
たいがいどんなことだって受け入れる所存だ
いつも空いている定食屋が今日に限って混んでいるのにも
あと一歩で乗り損ねた電車にも
服の袖に、ドアノブを引っ掛けても笑えるのだ
手袋と靴下が片方ずつないことにも
だって雨降ってるし
だけど「心の闇」とか歌われても困るんだ「ココロノヤミ」とか
もうそんなん歌ってる時点でばっちりくっきり見えちゃってんじゃん
闇どころか煌々とライトついちゃってるし
だって雨降りそうだしね
戻る 編 削 Point(5)