消されてしまった詩は舌の裏に隠されていた/すみたに
黒板から不機嫌に拭き消された詩はノートの裏表紙に書かれていた。
知らなかっただろう、二日前にはまだ星が見えていた、窓から夜空が見渡せた、そこに硝子が割れずにあったことを。もう思い出せないんだ、すまないとわたしは言ったが、嘘を吐くなとわたしの瞼をつねり上げ、眼球に接吻しようとするお前、泡立った黄色い涎が、わたしの視界を切れ目ない光の世界へと誘い、闇はひとつの光となる。気が触れてからというものの、お前の顔は真っ赤に腫れあがり、お前の心から血の気が失せた、青い生命の硬さにわたしは触れられない、ざらついた表面には数億本の細かな棘がはえ、わたしの肉片を攫っていく。変化したのは街の方だったが、誰
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