秋の飛翔/灰泥軽茶
 
見上げると木の葉はもう染まっている

風もずいぶんと冷たい

そうして

風で葉が落ちているのを

何も考えずに眺めていると

いつのまにか私が大切にしてきたことも

こうして自然に落ちていっているのではないかと

不安になる

忘れることはいいことかもしれないが

だからと言って新鮮な気持ちもあまりしないのは

なぜだろうと

そっと一枚落ち葉を拾い身体につけると

忘れていた感覚の端っこがむず痒い

一枚一枚ひょいひょいと身体につけていくと

あぁこの感覚がよみがえる

吸い込む空気が吐き出す空気が弾けて消える

そうだと落ち葉が埋まる土の上に

ごろごろ寝転がり身体中に落ち葉を纏うと

私はもう全身力がみなぎり

全力疾走で走り出し

橋の上から飛び降り

風と共に空高く舞い上がり

私たちは散り散り方々

いろとりどり飛ばされていき

漠然とした意識の中で

満ち足りた気分で消えていく











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