ABEGG/しもつき七
きみのだいじなピアノがあって
叩けば壊れる鍵盤と、たたかなければ止まる音楽
調律したての
うつくしい音色が始まり粒になって外に雪が降る
夕焼けが結晶にぶちあたりながら
きらきら光を溢していた
ドアベルが鳴れば
誠実なきみは手を止めるだろう
それならわたしは無実の隣人だって殺しにいく
半音上げて
景色がかわって
窓辺を飾るカーテンもちがって
いつのまにか砂に埋もれてしまった足
月齢を数えるうち、とっくに浸水していた
訪ねてきた隣人に
手をかけながら待っているのは
氷に刃をあてたような冷たさと硬質
大きな動物の息を間
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