まちわびて/すみたに
 
 

 駅前の 賑やかしから 常緑樹
 並木をくぐる 若人二人

 そのうしろ 散歩する犬にほほえみ
 ベンチ腰かけ 寒さ身にしみ
 
 待ち合わせ相手はこない
 ポッケから
 リルケ詩集を 取り出ししまう
 
 噴水の 噴き上がるのはなんどめか
 信号変わるのはなんどめか

 改札の 傍のベンチに 座り込み
 缶コーヒーを 冷めるにまかせ
 
 読みかけの本とのみさしのコーヒー
 立ち去ろうとし 面に風あたる

 道路沿いで紅く燃える木の葉すら
 寒々しげに 震わせて散り
 
 ひとけ無い 路地はかわらぬ
 清新な 風追いやって ゴミ臭よどむ

 街灯の 暗さ際立つ 街の夜
 飛び交う虫も もう居ない秋

[グループ]
戻る   Point(3)