リルケから若き中島敦への手紙/すみたに
 


 さてこれは一つの『山月記』論である。
 
 リルケの「若き詩人への手紙」(新潮文庫)の豊かで人を救う敬虔な文章に、
 ぼくはすっかり夢中になっている。
 だが、それだけではまるで読書と言うのは儚いではないか。
 ぼくは読書をする時対話をする。
 まだみぬ、そしていつかみることがあるかもしれない作者たちの精神と。
 そしてそれは鏡像である。
 それで、話はとおくへと、別の世界へと飛んでいく。

 それが今回の中島敦の『山月記』論である。

 漢籍だけでなく、古今東西の書物に通暁していた
 明治・大正・昭和初期のステレオタイプな作家や知識人。
 中島敦はサラブレッ
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