すておかれたものの詩/すみたに
それはある朝突然のこと
布団から身体を出せないのだ
まだ秋 寒さのせいじゃない
それからわたしは奇妙な薬を飲まされた
憂鬱な感情はそのままに
身体は動き 緊張はほぐされた
これを捨てにいかないと――
わたしは外へと駆り立てたられた
どこか街中の人混みへと消えていきたかった
どこかへ行って 道ばたに
ひとつひとつの忘却を それの忘却を
目的地まで転々と おきざりにするのだ
そして街中の渚 雑踏の白波に
流しけされてゆけ…… 足跡みたく
落としたら二度とあらわれないでくれよ
けれどもふらり街ついてぽろり落ちても
なぜかそれはおちていかない感じがする
それでもみてみぬふりして人混み歩くも
あれもこれもしかしそれ自体理由なく
落ちていってしまったもの
そして拾われることもないものだから
ぽろぽろろ、ぽろぽろろ ぽろろぽろ
ねえ、その黒いけしかす、とわたしは思う
無理おしてねがいますから
どうかこのまますておかれていってください
いいかけてそれの顔見て口つぐみ
唾をのむのはなにかおかしく笑えない
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