ペイター「ルネサンス」 (3)/藤原 実
が出されるだけで、
「あらゆる芸術は音楽の状態を憧れる」(『ルネサンス』「ジョルジョーネ派」)
といった断片的なコトバだけがただ知られるばかりで、だれもちゃんと読もうとはしなくなってし
まったのだろう。ぼくじしんもペイターといっても西脇順三郎が若いころに影響を受けたひととい
う程度の認識しか、つい最近までなかった。
エリオットは二十世紀の詩に巨大な足跡を残したし、リチャーズの客観的批評の実験はカタチを変
えながら、分析批評など小学校の詩の学習にまで取り入れられている。エリオットが望んだように
ひとつの権威となったのである。
しかし、今日の詩の世界のコントンとした状況を思うと、かれらの足跡を無批判に偉大なものとし
て受け入れることにはもはや非常な困難を感じる。
いまやわれわれじしんの「歴史的意識」を二十世紀的な詩の見方から解放して、失われたものを再
評価し、取り戻すべき時が来ているのではないだろうか。
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