手錠とその因果/MOJO
 
を眺めていた。
 もう心配することは何もない。心地よい風に吹かれながら、私は幸福感に満ち足りていた。
 そんな夢から目覚めた朝は、アラームが鳴るまでのほんの数分間でこれから始まる退屈な日常を受け入れる覚悟を決めるのである。アラームが鳴りだすまえに、ベッドから起きて窓を開ける。初冬の冷気を部屋に取り込み澱んだ空気を換気してみてもよい。しかし私は決してそうしようとしない。
 今朝は朝礼でスピーチの当番だ。何をどう話して五分間まを持たせようか。報告書の提出期限は過ぎているからその言い訳も考えておかなくては。さあアラームよ、さっさと鳴ってしまえ。
 半睡状態でそんなこんなををうつらうるらと考えなが
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