旅人への歌/HAL
 
だ『不意に発生する事態に関する瞑想』の17番だったか

やがて紙のように降り始める白い雪は
末期の水のように唇で静かに溶ける
木枯らしはよくぞここまでとゴスペルかのような旅人への賛歌
そのときまたも教会の鐘が聴こえる祝福の幻聴

そう もう終わる そう もう終わる
歓びも哀しさも淋しさも虚しさも
充分に舐め尽くしてきて

そう もう終わる そう もう終わる
張られたゴール・テープにはGoalではなくSmile!と書かれている
季節外れにひっそり咲く白菊は旅を終えるひとに薫りで告げる

小さな幸せはあっただろと旅をして来たひとに
長くもあり短くもあった旅に意味はあったんだとの言葉の代わりに


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