サーカス/結城 希
彫刻の道化が
舞台の上に佇んでいる
暗闇のなかで
誰かが固唾を呑む音がする
彫刻が 手を振り出した先に
三振りの剣が現れた
剣は 次々に道化を離れ
宙高く飛び上がっては
また道化の顔上に戻る
一つとして同じ軌跡なく
乱雑な無秩序でありながら
完全な制御下にあるというのか
道化を傷つけることは敵わない
拍子が爆ぜる
深奥から
無音の兵士たちが現れる
十六名の兵士が円陣を組み
気炎を吐いて道化を囲む
道化は鋭く剣を投じ
三名の兵を葬って疾駆する
撥条床を高く跳ね上がった道化は
襲い来る槍頭を寸前で躱し
素早く地に降り立つが
残る
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)