続続・田村隆一詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
彼はエッセイ「極の誘ひ」において、北極への憧れを強く語っています。そこでは「人・獣・神」が一体となり、そこには神話力の源泉があり、そこは「ネガティフな生命の源泉」であり、彼はそこへと垂直に向かっていこうとします。彼には壮大なロマンがあり、そのロマンへ向けて彼自身を厳しく律していくのです。
この吉田の姿勢は、初期田村に似ていないでしょうか。確かに、初期田村は主に思想を語っており、吉田のようなイメージ偏重ではありません。ですが、戦後、軍隊での厳しい規律や戦時の緊張状態をどこかひきずりながら、と同時に敗戦の傷と立ち向かい、その傷から否応なく発されていく言葉を発した初期田村の厳しさと遊びのなさは吉田に
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