続続・田村隆一詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
 
いる木はない


ぼくはきみのことが大好きだ


 この詩が収められている詩集『水半球』は、1980年、田村が57歳のときに出されています。さて、この詩集が刊行される前年、1979年に、田村は西脇順三郎について、篠田一士、鍵谷幸信とともに、「諧謔と幽玄の哀歌」という対談を行っています。そこから引用します。

篠田 そうなんだ、つまり吉田一穂とは違うのよ。
田村 ありゃだめよ。
篠田 いや、だめじゃないけど、吉田一穂は固執しないとわからないし面白くない。固執させることによって詩的言語を確保したんだから。
鍵谷 それは意味あることでね、吉田一穂の場合は言葉に固執し、詩の世界を閉
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