moonlight/empty
ない
人工的な記憶には人工的な死がお似合いだ
すべての光はフィラメントを透過し
あなたに振りそそぐ
すべては終わっているから
あなたはただ笑うだけでいい
目と目があった瞬間に
それがわかる
幼子を抱えて
セイレーンのような視線はすべてを焼き尽くすほどの愛おしさにあふれている
醜い死はそこでは道化だ
回転する木馬
廃墟と化した遊園地の
〈未来都市は廃墟だ〉と言った建築家を思い出す
雑草に覆われたここはまさに〈未来都市〉
誰もいない
認識する主体がいなければ
それは究極の〈モノ〉性を帯びるのではないか
カントの〈物自体〉
存在者の不在が〈物自体〉を成就する
なんとも皮肉な世界
きっと造物主は世界が目的で覆われることを好まないのだろう
そんなことをつらつらと考えていると
あなたを載せた
緑が鮮やかな葉っぱにゴム鞠のようにおおわれた木馬が
動き出す
動力源などどうでもよかった
それは不気味に美しい光景
虚空へむかって漕ぎ出す架空の木馬に
わたしは手を振った
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