彼の地/ブライアン
街が光を放っている。
朝が来て、働いて、日が沈み、帰宅し、眠るだけ。
道端に運ばれる香りが、しゃがれた女性の声に交じる。
香水か、用水路の香りか。
ソビエト連邦へ行った彼女は、メリーゴーランド。
山の斜面に植え付けられたデラウェア種の葡萄。
ソングライダーが飛び降りた湖で、彼女は自らの土地だった場所を見る。
とてもよく耕された、美しい水田が、
盆地の果てまで続いている。もちろん、
全てが彼女の土地だったわけじゃない。
斜陽が彼女の横顔に当たる。
民衆の反旗は、血が流れすぎる。
国道113号線、七ヶ宿の峠を越えても、
なお。
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