黒猫の花/うみこ
生活を続けるために
縛られた猫になる
すきま風に揺れる
小さな花は、使わなくなったグラスの中
自由な生き方よりも
不自由の様子をうかがってしまうのは
そっちのほうが
安心できるからかな
最終の電車にも
黒猫は乗っている
そして街を駆ける
そのあと秘密の路地を抜けて
落ち着ける場所で眠る
一人のうちは
銀の夜風を
引き連れてゆくよ
その花に合う水をくみ
いつか初恋のハナちゃんみたいな人に
出会いたいな
そんな気分だ
恋心のような
淡い色は磨り硝子の向こう
冷たい風にぼんやり咲いている
ひとつ摘み取って飾るのさ
黒猫の花はヒナゲシのように可愛い花だ
きっと淋しさを
秘めているのだ
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