りんごの夢/
朧月
どこか遠くからきたりんごが
台所に座っていた
母親が小言をいう
父親がだまってテレビをみている
そんな普通の家庭に
憧れる私の目の前に
この時期しか売られないんですよ
売り場の女性の目が少しも
笑っていないことが気にかかり
上の空で一個だけ買った
りんごは想ってる
また故郷へかえろうって
役目が終わればきっと
かえれると
信じて座ってる
ゆっくり皮をむく
残さず食べれるように
私の家族も手を伸ばし
りんごを食べる
深く味わって
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