放課後の放送室/ベンジャミン
 
小学校の放送室は
僕の隠れ家だった

放送委員の僕は
毎日お昼のニュースを読み上げ
学校行事のビデオを流したり
紙芝居を読んだりした

放課後になると
僕は一人
据えられたテレビカメラに向かって
原稿を読み上げる

それは些細な日常の出来事や
好きな子にわたせない手紙だったり
へたくそな詩だったりした

ある日僕は
一斉放送のスイッチを入れたまま
へたくそな詩を読み上げた


   片方の翼

 最初は二つあったんだ
 僕の背中にも
 いつからか
 片方だけになっちゃって
 僕はもう飛べない
 みんなならどうするだろう
 片方だけで飛ぼうとするの?
 すぐにあきらめてしまうの?
 今の僕には
 どっちも選べない
 今の僕には
 片方の翼しかないことを
 なげくことしかできない


気がつくと
防音室の窓越しに先生が見えた
先生は怒るでもなく
ただじっと僕を見て

そんな先生を見ながら
僕は泣いた

その泣き声は
誰もいない教室にも響いたことだろう


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