コヨーテから始めて/yamadahifumi
 
  

 長い夜の果てに俺の孤独が横たわっていた。誰も彼もが歌を歌っていた。それもとびきり陽気な歌を。
 コヨーテの遠く長大な遠吠えが闇夜にこだまする時、俺の魂もまた目覚める。俺は歯を磨くために全世界を捨ててから洗面台に向かう。そこには俺の顔が映っている。髭はぼうぼうで、目は血走り、頬は痩せこけている。三日ほど何も食べていない。俺は死ねなかったのだ・・・。
 と、そこでまたコヨーテの遠吠えが聞こえる。奴め、どこで鳴いているのだ・・・。俺は顔を洗い、歯を磨き、サンドイッチと牛乳の朝食を取る。こうして再び、世界が俺の眼球の奥に押し込められた。
 俺は生きていた。全く不思議な事に。

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