サングラスのキューピット/芦沢 恵
 
信号機が一つ増えただけだった

それが妙に腹立たしくて

この道を使うわたしはエゴイスト


狭い

直角に曲がることの

繰り返し 運転は苦手


3つ目の突き当たりで気づいた

左手に雑草絨毯を敷き詰めた応接間を


横たわる水道管が3メートル

その中を22年前の夏 或る暑い日曜日

でなければ

21年前の冬 寒い祝日の火曜日でもいい


14と14の春夏秋冬


確かにその中を走る水が

あなたの喉を潤し

手足の汚れを洗い流した


車を止めてみる


深い絨毯のすき間には

ブロックのかけらが

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