ギブ・ミー・シェルター/テシノ
読みかけの本の
開いたページのすぐ横に
わたしを置き忘れてしまった
駅に着く頃
あ、しまったと気付くが
頭はどうしてもあの電車に乗りたがる
今日は座れた
昨日は座れなかったからね
よかったよかった
と話しかけても
返事がない
わたしはわたしを忘れたことを忘れた
学校に着いたらおはようの応酬
見慣れた朝に紛れ込むとき
人は人の形をしたただの密度だ
ふと鞄の中から気配がした
何かと思って覗き込むと
小さいの頃のわたしがいた
ああ、これはまずいな
まずいことになった
着替えのTシャツを掴んだときに
間違えてしまったのだ
久しぶりに部屋を出た小さいわ
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