「夏空」/ベンジャミン
 
ただ
青いだけじゃなかった

あの頃の空に心は
どこまでも焦がれていて
その日差しよりもはるかに
まぶしく映っていた

誰だって一日空を見上げない日はあるって
あなたはやっぱりまぶしそうに空を見上げ
そのくせ焼きつくような視線で追いかける

それを一緒に見たくても
重ならないのはきっと
それがもう残像だから
そうやって夏空は
夕焼け色の方へ
ゆっくりと流れていった

あれからもう何年もたつというのに
ときおり忘れたように見上げた空が
苦しいほど青いときがある

それは
あの頃の空に焦がれていた心が
空に焦がれていたように思えただけで

本当は
あなたに焦がれていたことを
そっと思い出したくなるからなのだと

夏空は
またゆっくりと季節を変えながら


一つ遠くへ去ってしまう



 
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