ビー玉/永乃ゆち
雨の日はビー玉に
世界を映して覗き見た。
このビー玉をくれたのは知らないおじさんで
両手に溢れるほどの色とりどりのビー玉をくれた。
雨の日は透明。
夕暮れは橙。
早朝は青。
今思えば、あのおじさんは父だったのだろう。
物心つく前に行方知れずになったと聞いていた。
最期に私に会いに来たんじゃないか。
世の中はビー玉の世界よりも薄汚れてて
僅かな光を探す事さえ困難だ。
それでもその中で生きていかなければならない私たちは
今日も右往左往しながら足掻いて一日を終える。
父はこの世界には合わなかったのだ。
足掻いても足掻いても沈みゆく運命だったのだ。
私はビー玉が手放せない。
私と父の唯一の接点。
毎日に疲れた時
ビー玉に映る世界を覗きこむ。
そこに父はいないか。
今日も
探しながら。
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