だれか/松本 卓也
 
疲れに目を瞑りほんの少しの間
眉間に指を押し付け俯いていると
瞼に張り付いた幾つかの映像が
こっちを向いている様な錯覚を感じる

かつて焦がれていた横顔のよう
微かに心奪われた笑顔のよう
僅かな共通点も見当たらない偶像
告げられたのは現在が転がる孤独

別に今のほうが楽に生きていける
助けてほしいとか寄り添ってほしいとか
言った覚えもなければ縋ったつもりもない
だけどか細く続いていく感情が転がってて

ねぇ、と呼びかけたって何も聞こえない
差し伸べられたかのは単なる勘違いなのだけれども
本当は心の底の奥のもっとずっと向こう側で
誰かに微笑んで欲しいと願ってるんじゃないか

目を開けても当然に天井は白いまま
壁に立てかけたシャツが一瞬でも人型に見え
もしもそこに誰かが立っていてくれるなら
何か言葉をかけてくれるとしたら
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