黄昏/HAL
気がつくと窓から射し込む
光の色が朱から濃い藍に
変わっていこうとしていた
ああ、もう陽が落ちる時間が早くなった
ぼくは窓に眼を遣るだけで
ソファから立ち上がらなかった
此処に移ってもう何年になるんだろう
いやもう十年以上の歳月は流れたのだろうと
煙草に火を点けて暮れてゆく色彩の変化を視る
いつまでもこうして黄昏れていく
逢魔時を視ていることができるのだろうと
別になんの怖れもなくただ想うだけ
たくさんのことがあったな
たくさんのひとにあったな
朧に過ぎし日々を想うだけ
そういえば黄昏と云う映画を観たっけ
監督はぼくの好きだったマーク・ライデルだ
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