ティアドロップ/ブルーベリー
ゆるゆると目を開ければ
ネクタイの衣擦れる音で
覚醒する
ギターを爪弾いた手が
今は不器用にネクタイを結んでいた
ワイシャツの光沢が目を刺す
君の手はそんなに大きくなかった
アーケード街の地下のライブハウス
土曜の課題を抱えながら寄り道をした私を
君は意地悪に哂うと
白く細くこの手でその喉で
震えるように光の中で叫んだ
それでも独りではなかった
猫の絵を描いてくれたTシャツに
袖を通すその前に
君は知らない人になった
夢見た君の声をいくつか知っていたのに
君は知らない人になった
今だったらよかったのにね
雪の深さも風の強さも知っていたのに
矮小なこの世界を泳ぐ術は知らなかった
君は割と愚かで無鉄砲で優しすぎた
また弦を切らしただけなんでしょう
白い柔らかな乱暴な指の感覚が
知らない人になった君を
過去にはさせてくれなかった
ティアドロップに触れる
君の顔が 少し変わっていたとしても
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