落日/三田九郎
 
君がなにかTVの話をしている

脳に注がれる曖昧でぬるい声色

もっともらしいことを言うので

もっともらしく首肯してみせる

君の紅茶がおいしいのは不変だ

いつもの紅茶が口腔を湿らせる

ふいに世界が色彩を失っていく

台詞が感情から遠ざかっていく

君との現場が遠景になっていく

二口目が舌先から僕を浸食して

意識が少しだけ現場に回帰する

なにか言うのでまたなにか言う

なにか言うのでまたなにか言う

溜息がまたたくまに重たくなる

人の言うことは絶望的に不変だ

ひとりぼっちの時間以上の孤独

飲む仕草でティーカップに接吻

二人の陽はもう遠く沈んでいる

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