落ちる/
芦沢 恵
みちに迷ったことに
恥じ入ることはない
迷わず進めたのは
その道を知るだけの
他愛ない偶然
みちに迷って
涙することなどない
笑いながらすすめたのは
その先にある何かを知る者の
特権でしかない
みちはいつしか果てる
果てぬみちを求めるならば
落ちるところへ
行かねばならない
それを望む人間などいない
ただ落ちてしまうこともある。
それは
みちに迷わなかったからだ。
戻る
編
削
Point
(15)