落ちる/芦沢 恵
 
みちに迷ったことに

恥じ入ることはない

迷わず進めたのは

その道を知るだけの

他愛ない偶然

みちに迷って

涙することなどない

笑いながらすすめたのは

その先にある何かを知る者の

特権でしかない

みちはいつしか果てる

果てぬみちを求めるならば

落ちるところへ

行かねばならない

それを望む人間などいない

ただ落ちてしまうこともある。

それは
みちに迷わなかったからだ。

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