【批評祭参加作品】 なにも変わらなかった/アンテ
 
ろう。きっと。だれかを傷つけることはあっても、力にはなれない。ぼくの心の大部分はそう思っている。なにも変わらない。なにも変わらなかった。あの時。だれも、だれの言葉も響かなかった。でも、と心のほんの一部分は思っている。でも。
 でも、ぼくは知っている。きっと、そんな風にしか、表現することができないことも。
 だから、一度言葉にしてしまったことから、目をそらすべきではないと思う。
 ……ああ。嘘はいけない。今、そう覚悟した、というべきだ。
 ごめんなさい、という言葉について。
 鉛筆を握りしめる手の痛さについて。
 スタッカート。
 ぼくのクラスメートは、ぼくをはやし立てる。ぼくの先生は、ぼくを殴る。
 ぼくは?
 ぼくの手は、鉛筆を握っている。



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