あんな思い出のせいだろう/飯沼ふるい
 

梨の花に囲まれて延びる
二車線の県道を通って
家に帰った
その時に好んで聴いていたのは
Eaglesの
hotel Californiaだった

一日をじんわりと焼いて終った夕陽が
吾妻連峰へ沈んでいく
その穏やかな没落を悼むような
ドン・ヘンリーの掠れ声は
今日という一日から取り残されたものたちが
朱に染まっていく寂しい時間に冴えて
切なく響いた





いつの間にか
活火山に抱かれた小さな町から離れて
地平線がどこまでも広がっていく
関東平野に住み着いた
ここ最近
ずっと頭痛が治らない
あぁ、これはきっと
あんな思い出のせいだろう
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