再生/三田九郎
 
酒を飲むのと

書くのとは少し似ている

ひとりでこうして書いていると

波立つ胸が落ち着いていく

秋の夜風の優しさに

油断すると涙こぼるる

誰にも知られることのない

語られることのない

説明する気も

求められることもない

わけなく ただ

書かずにはいられない

お前と

あいつと

時にわけなく飲みたくなる

似たようなもんだ

何を頼んだかわからなくなる

でも何だっていいんだ、ほとんどのことは

誰もが似たようなことで

喜び 悲しみ

苦しんでいる

なにもかもが違っていて

どこか似ていて

そのどれもが尊い

わかることと

わからないことが

頭の中に散乱していて

叫ぶ代わりに

言えないことを言わない代わりに

ときどき書く

ほんの少し生き返る

行き過ぎた気持ちを

ほんの少し巻き戻す

いつもの あの 喫茶店で
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