街灯/三田九郎
 
改札

を過ぎると薄暗い穴に吸い込まれる

二秒又は三秒

そして薄紅の膜に包まれ

僕は精神の一部を失って

吐き出され

通勤の群れに侵食され

溶け入る

ああいまなんかすごくいいインスピレーション浮かんだ

んだ

よな、メモらなかったからどっか行っちゃった

あの瞬間の脳内振動の再現

はない

喪失

感が僕を青空に向かわせる

夜な夜な女を泣かせたりするせいで近頃の酒は不味い

今夜もやっちまった

哀しみのビー玉がころり転がる

帰路、

改札の手前で薄暗い穴に吸い込まれる

二秒又は三秒

そして薄紅の膜は剥ぎ取られ

僕は精神の一部を取り戻し

吐き出され

月が遠くに浮かぶ

黒い家路

哀しみのビー玉がころころ転がる

ころころ

我が道は日々傾き続け

ころ

世界を支えるのは街灯だけ

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