竜野市へゆく/生田 稔
 
西宮43年以前なる記憶はありて今走り過ぐ

 岩肌をあらわに見する山ありて過ぎゆく道の後ろに消ゆ

 濃き緑連山つづく広き国兵庫の土地にはや着きにけり

 揖保の里そうめん食みし昼げの間しきり考う身の上の名を

  揖保川のほとりを行きて川面にはそよそよそよと風が吹きいる

  燈籠の三対立ちけり永富家庭の木立にそよ風も吹く

  鏡台に箪笥ありけりさしずめも女主人の部屋にありけむ

  団扇持ち一めぐりせし内庭の蔵のさび槍ゆかしとおもう
    

 妻奉仕に出る

朝9時の出立の時妻装うキリリと仕上げ立ちおりにけり

頑張ってと声をかければ「まあね」と元気に答え出でたりき

吾ははた資料につきて練習と机に向かい本を開けり 

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