たびたち/田園
 
たびたち



夢中になるものをみつけなさい

そう少年の母親は言い
銀貨を三枚とつくろった衣服を風呂敷に包み
少年を家から

ピシャリ

追い出した

少年はパニックになり
家の前で号泣した
二軒先のオヤジがうるせえと怒鳴った

泣くだけ泣いた少年は
「ママはもういないんだ」
「いるけれどそれはもうママじゃないんだ」とうっすら理解した

そしてとぼとぼと家だった暖かい場所から離れた

駅につき切符を買った
「僕は遠くにいかなくちゃならない」
「うんと遠い…そうだイーハトーヴに行こう」

行き先を決めた少年は切符をぎゅっと
誰にも盗まれないように
風に飛ばされないように握りしめた

少年は決意したのだ
少年は名もない旅人となった




さあ少年はどうなったろう
飢えて死んだか
無事イーハトーヴについたか
わたくしには分からない
少年の命はわたくしが語る程軽くないからだ

これは一人の少年の希望の話
そしてわたくしの懺悔の話


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