ファンタオレンジ/永乃ゆち
 
――――夏の初めだった――――


おばあちゃんが他界した。

おばあちゃんは、どこにでもいるような

ごくごく普通の田舎のおばあちゃんで

真面目で頑固で亭主関白な大正生まれのおじいちゃんを

献身的に支えていた。

ように見せかけて手を抜くところは要領よく手を抜いて

よく愚痴り、おじいちゃんに隠れて死ぬまで煙草を吸っていた。



おばあちゃんは元々、血の止まらない病気で

滑って転んでテーブルの角に頭をぶつけ

それによって脳内出血し、それが致命傷で亡くなった。


幾つもの細いチューブに繋がれたおばあちゃんを

お見舞いに行った時に
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