その他大勢の中の孤独という事。/永乃ゆち
風邪をひいたと言う人の見舞いには行かない きっとまた迷うから
真昼間に蛇口から出た熱い水「お湯じゃなくてさ」と言う君が好き
放課後の少女は三つ編み解きつつ運命などを未だ夢見る
あの坂で告白しようと決めたから陽炎にさえ揺れないポプラ
なりたての彼氏と彼女に太陽は焦がれてコロナを熱く黒く
街に出て青く輝く人たちに魚のような口付けをする
桃色の髪した火星人などはテラの人とは合わないらしい
原色の海月の群れに遭遇し孤独を想う深夜のファミレス
高校生、だったあの頃本当は天動説を信じてました
空っぽのカンバス壁に打ち付けて無から生まれる芸術を説く
[次のページ]
戻る 編 削 Point(8)