その他大勢の中の孤独という事。/永乃ゆち
 

風邪をひいたと言う人の見舞いには行かない きっとまた迷うから

真昼間に蛇口から出た熱い水「お湯じゃなくてさ」と言う君が好き

放課後の少女は三つ編み解きつつ運命などを未だ夢見る

あの坂で告白しようと決めたから陽炎にさえ揺れないポプラ

なりたての彼氏と彼女に太陽は焦がれてコロナを熱く黒く

街に出て青く輝く人たちに魚のような口付けをする

桃色の髪した火星人などはテラの人とは合わないらしい

原色の海月の群れに遭遇し孤独を想う深夜のファミレス

高校生、だったあの頃本当は天動説を信じてました

空っぽのカンバス壁に打ち付けて無から生まれる芸術を説く

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