君を待ち続けて/灘 修二
 

だが、君は来なかった
蹄の音で目を覚まし、石畳から天を見上げて異邦人が祈りを捧げる
愛しい人よ
出てきておくれ
今日は、君に出会うために最高の朝をくれたから

昼がきた
だが、君は来なかった
太陽が湖岸に揺れる波を射貫くと、真夏の空の競演がはじまった。
君から吹き下ろす風が透明なバラを描くかと思うと
君の侍雲は、湖を映した青色のキャンバスを縦横無塵にさすらう
だが、君は不動のまま、姿を現さない

午後が来た
だが、君は来なかった
どのくらい待っただろうか。
時間の速度が鈍くなり、私の影が長くなる頃、遠くから雁が渡ってきた

このまま君に会わずに帰ろうか
君が求めているものとわたしが求めているものは違う
愛と夜が出会い、朝と決別する君とすれ違う

会えなくてもいい
このまま、あこがれの貴婦人でいておくれ
肩にかかった残雪渡る初雁に、雲の扉を開けてもらい
私の想いを届けてもらうから
片想いが透きとおっていく空の彼方へ

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