都営団地の屋上で/
馬野ミキ
四階建ての都営住宅にはエレベーターがないので
俺は階段を駆け足であがった
このあたりの踊り場にはすべて思い出がある
どの消化器の裏にも
俺たちはびっしりと詩を描いた
立て付けの悪い
屋上への扉に
鍵はかかっていなかった
ダイヤル式の鍵を
キムが
区に変わって管理していた
扉を開けると
そこはモンゴルか天空の城のようであった
俺は青い空の引力に吸い込
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