晩秋/渦巻二三五
 

暁の太陽は黄ににごりゐて霧の向かうにごろりころがる

死に際の蜂歩みをり無傷なる秋の薄羽を背に負ひつつ

うとまれず待たれず夕の半月よ灰紫に左欠けたる

目覚めれば降りはじめたる雨音につながる夢をわれは見てゐし

「からだごと生まれてきたの」ねむさうなインコに身の上話などする

はじめからみな失われゐたりしよこのあたたかき白湯もまぼろし

二階まで昇り来たりし白蝶の紅葉かつ散るなかへおりゆく

夢を見ぬ眠りさますなわたくしのわたくしだけの行方不明です

しあはせになれぬ娘はあけがたのはるかな父に撃たれ死にたし



     
初出:二〇〇一年五月@nifty現代詩フォーラム


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