永い冬眠/HAL
 
きが遅くなり
ソファも家具もごみ箱さえも凍っていこうとしてるのに
この部屋はその冷たさにまだ気づかない

やがてこの部屋の温度が絶対零度になったとき
もうこの部屋の扉は硬く凍てつき
もう誰も迎えられなくなることを知らないままに
死後硬直に襲われることをこの部屋は受け入れるのかしら

だけどスピーカーから流れるベルリオーズの
幻想交響曲だけが永遠に流れつづけ止むことはないことを

そしてそれは決してこの部屋の鎮魂歌でないことを
いつか必ず訪れる春を迎える賛歌であることを

この部屋は分かりながら果てしない冬眠に入るのかしら
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